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花まる学習会王子小劇場の企画発起人の佐藤孝治の観劇ブログです。

【芝居】「雑種 花月夜」あやめ十八番 @花まる学習会王子小劇場 2016.8.6.13:00

あやめ十八番『雑種 花月夜』はお団子やさんのお話です。家族五人でお団子を作って売って暮らしています。目の前にほんとにお団子やさんがあって、そこにお団子があるような気がしていました。ロビーでお団子をお茶を売ったら売り切れたんじゃないかな。それくらいお団子が食べたくなりました。

作・演出の堀越涼さんが最初に登場して、自分がこの作品を創りましたよということを伝えます。また、ミュージカルだよということも、明確に宣言します。途中、ちょこちょこと登場して『雑種 花月夜』の世界の没入している自分を認識させられます。僕はこういうの割と好きです。

昔にやっていたミュージカルの世界とお団子やの世界を行ったり来たりするのですが、前々関係ない話のように思っていたものが、意味的にもシンクロしてきます。じわじわを面白い感じで、楽しく観させてもらいました。

8/2[Tue]~8/7[Sun]
http://ayame-no18.iftaf.jp/

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【作・演出】堀越涼 【出演】大森茉利子、金子侑加、笹木皓太、堀越涼(以上、あやめ十八番)
秋葉陽司(花組芝居)、丸川敬之(花組芝居)、
井上啓子、小口ふみか、ミヤタユーヤ、清川果林、星亜沙美、藤崎朱香、内田京、
島田大翼(オペラシアターこんにゃく座
≪音楽監督≫
吉田能(花掘レ)

【内容】私の家はお団子屋さんです。
返田神宮というわりと大きな神宮の参道で、小堀屋という名のお団子屋さんを営んでいます。五人家族全員で、お団子を売って暮らしています。参拝にくる、観光客の皆さんに、お団子を売って暮らしています。お父さん、お母さんが、団子を作り、出来た団子を、蜜(みつ)姉と白(ゆき)姉が丸め、私が、外で売り子をします。この辺りは、雑誌に載るような観光地ではないけれど、家族が食べていくには十分で、日々の天気に一喜一憂しながら五人、可愛く商いしています。

身内の事を褒めるのは、何だか気恥ずかしいようですが、蜜姉は、完璧です。
私と白姉は、多分生涯、この人に勝てないでしょう。
誰よりも早く仕事を始め、誰よりも遅くまで仕事をし、嫌な顔一つしない。面倒な仕事は買って出て、炊事・洗濯・お風呂掃除、何でも一人でこなしてしまう。綺麗で、賢くて、誰でも分け隔てなく優しいので、男のお客様は皆、蜜姉の虜になってしまいます。常連のお客様からよく金平糖など差し入れられ、捨てなよ。たいして美味しくないし。と言っても、折角だし、もったいないもの。とすべて平らげ、少し太ったかしらと、朝夕にジョギングまでしてしまう完璧超人なのです。白姉は、ハナから勝負にならんわ。と匙を投げ、私は、そんな蜜姉に憧れてはいるものの、どうやっても同じようには出来ないし、人それぞれの良さがある。と決めつけて、色んなことをサボっています。蜜姉は、やっぱり完璧です。

毎年、四月七日の夜。
大忙しの“お田植祭”が終わり、見頃だった桜もハラハラと散り始め、少しホッとした七日の夜。
皆で夕飯をとる元気が出て、お母さんが録画していた二時間ドラマを見始めると、蜜姉はおやすみなさいと一声かけて、二階にある自分の部屋に籠って、大きな声で泣き始めます。

ドラマで犯人が捕まるまでの、たっぷり二時間、泣き声は止みません。居間にその声が聞こえてきても、家族は誰も、蜜姉に声をかけません。かける言葉が無いのです。
蜜姉は多分、昔の事を思い出しているのでしょう。

完璧な蜜姉のたった一つの失敗が、旦那さん選びでした。

花月夜は、私の一番上のお姉ちゃん、小堀蜜のお話です。